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い草産地レポート〜いぐさを訪ねて〜

2009熊本編 (2009年12月訪問)


2009年12月4日〜6日の日程で、い草の植え付け体験に行ってきました。今回お世話になるのは、下永さんと福本さんです。「い草の刈り取りよりも、もっときついよ。」と脅かされながら始まりました。


1)たたき

い草の田植え「い田植え」は、苗作りから始まります。い草は分岐して増えていく植物で、苗は1次苗、2次苗と二回も植え替えられます。そしてやっと本田に植えつけられるのです。写真は、株を掘り起こしているところです。しっかりと根付いたい草は、掘り起こすのにかなりの力が要ります。


掘り起こされた株には、ずっしりと重い土が付いています。昔、その土を落とす作業は、板に“たたきつけて”落としていました。単純な作業に見えますが、これで全身筋肉痛です。


機械化が進んでいるとはいえ、かなりの重労働です。そんな中でも、女性はとても働き者です。



2)株分け

たたきで掘ってきた苗を、一つ一つ丁寧に割っていきます。ベテランのおばあちゃんから、直々にご指導していただきました。根っこが絡み合い、とても根気が要る仕事です。


6〜7本ごとに分けていきます。そのい草についている新しい芽が、根っこを張っていきます。早朝から深夜まで、黙々と作業は続きます。畳表ができるまでは、本当に手間ひまがかかります。


ベテランの皆様。どっしりとした佇まいが、年季を感じさせます。地道な作業を淡々と繰り返してきたのでしょう。本当に頭が下がります。


出来上がった苗は、水につけて植えられるのを待ちます。この一束の苗を作るのに、丸一日かかりました。気の遠くなる仕事です。



3)植え付け

いよいよ植え付けです。苗の準備ができた、福本さんの田んぼのお手伝いをさせていただきます。まずは、植えていく目印を付けていきます。約20センチ間隔の升目が、田んぼに描かれます。


もちろん手で植えられます。機械植えもあるそうですが、上質ない草を育てるには手植えが良いのだそうです。ひんやりとした泥は、とても気持ちがいい感触でした。一本一本、丁寧に植えていきます。


い田植えは、近所の方たちがお互いに協力し合って行います。今回は心強い助っ人がきました。白いジャンパーは息子さんで、県外に働きに出ているのですが、この日のために帰省していました。「日本のい草を頼んだぞ!」そして熊本最速の男、森野さんです。私の倍以上の速さです。


「い田植えは人生だ。」と教えられました。やっとその意味が分かってきたようです。果てしなく続く道のり。人に追い越され。転びそうになり。


やっと終わったと思えば。また初めから繰り返し。黙々と植える後姿にいろいろと感じるものがあります。「田植えの歌はあるのですか?」と聞いたところ、「黙って植えるんだ。」の一言。


あたたかいコーヒーがありがたかったです。自分と向き合う良い時間となりました。こういう営みがずっと続いてきたし、これからも大事なことは変えないでもいい環境をつくります。 


作業の後の食事は大変おいしかったです。こういう生産者と畳屋の交流が、より良いものをお客様に提供できると信じています。福本さん、そして皆様、大変お世話になりました。



4) 熊本城本丸御殿

熊本に何回も来ているのに、熊本城本丸御殿に行ったことがありませんでした。本丸御殿は数年前に復元されたもので、八代の畳表がふんだんに使われています。


部屋ごとに使われているい草の品種が違っていました。他のお客さんから見たら変な人たちですね。


2010年4月5日 鏡 芳昭


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