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い草産地レポート〜いぐさを訪ねて〜

2009熊本編 (2009年7月訪問)


2009年7月17〜19日の三日間、日本一の畳表生産地の熊本県八代市にい草刈り取り研修に行ってきました。生産者の橋口さんのお宅にホームステイし、本当の現場を経験させていただいました。広大ない草の田んぼと、ゲリラ豪雨が歓迎してくれました。いったいどんな三日間になるのかとても不安になりながらも、もう逃げられません。それでは、作業の順序に沿って、体験記をご紹介します。



(1)刈り取り準備

い草刈りは現在機械で行われていますが、まずは機械を入れるスペース作りから始まります。手刈りした後は、日が当たらないように、い草で覆います。また、田んぼの外側のい草はずっと日光が当たっていたため、畳表には使われません。



(2)夕刈り

午後4時、夕刈りが始まります。日が落ち始め気温が下がり始めた頃です。でも、相当熱いですが。


刈り取ったい草の束は、専用の箱に並べていきます。まず、根元を揃えて丁寧に積んでいきます。何百回、何千回と同じ事を繰り返します。まさに、修行です。また、この時間帯はい草が乾燥しているので、地下水のシャワーをかけてい草をシャキッとさせます。


休憩時間。冷たい飲み物がとてもうれしく、生き返ります。私もシャキッとしました。誰よりも良く働いている奥様が、いろいろと世話してくれます。熊本の女性は働き者です。


夜の刈り取りの準備で、い草にかけてある網をはずしていきます。い草の成長に合わせて、だんだん網を上げていきます。ここまで成るにも、たくさんの手間ひまがかかっています。


午後7時、ようやく暗くなってきました。夕焼けの空がとても印象的でした。暑い中の仕事は本当に体力を消耗します、おばあちゃんお疲れ様でした。私も全身が筋肉痛です。



(3)刈り取り体験

習うより慣れろで、いきなり機械に乗ることになりました。親切に教えてくれましたが、感覚でやるしかないですね。恐る恐るやってみると、・・・無我夢中でした。


刈り取られてくるい草は、以外に重くしなやかでした。時々橋口さんが声をかけてくれましたが、半分以上がダジャレでした。余裕のない私の緊張をほぐしてくれていたのでしょうか。


2〜3列くらい刈ってみると、なんとか感覚をつかめたような気がします。刈り取った後の株は、かなりしっかりとしています。



(4)深夜の刈り取り

午前3時、まだ真っ暗な田んぼでい草の刈り取りが始まります。気温・湿度ともに、人間には厳しい環境ですが、良質ない草が育つにはとても良い環境です。


機械の操作も少しは慣れてきましたが、無我夢中です。夕刈りのい草と比べて、ずっしりと重く活き活きとしているように感じました。刈り取りのタイミングでこれほど違うのかと、肌で感じてきました。


薄っすらと夜が明けてきました。重くしなやかない草は、体力を奪います。この作業の繰り返しは、精神的にも肉体的にも鍛えられます。


朝方5時ごろになると、ようやく明るくなってきます。刈り取りを終えて、い草の泥染め工程に移ります。一仕事終えた達成感が写真に出ています。



(5)泥染め

刈り取ったい草は、すぐに泥染めをしていきます。今はフォークリフトや設備があるのでだいぶ楽ですが、昔は一束ずつ手作業で泥染めしたそうです。


2槽になっていて、片方は空でもう一方は天然の土が溶かしてある泥水が入っています。まずは、空の槽にい草を入れ、草が浮いてこないように横から油圧の押さえではさみ、ポンプで泥水を注入します。


作業をしながらいろいろな話ができました。午前7時、朝ごはんです。生産者の日常を体験することで、ご苦労や、やり甲斐を体感する事ができます。このような体験をした畳屋が増えたらいいなと思います。



(6)釜出し

16時間かけて乾燥させたい草を、乾燥釜から取り出して袋詰めにする作業です。釜の内部温度は50度くらい、細かい泥の粉が視界をふさぎます。マスクは必需品です。


この作業も家族総出で行います。ベテランのおばあちゃんがいい仕事をしています。とても厳しい作業ですが、ここでも女性が活躍します。


袋詰めしたい草は、2階の倉庫に保管されます。日焼け防止のため、窓はありません。想像してみてください、息苦しい倉庫の中で、ほかほかのい草を抱きかかえているところを。


作業を終えて下に下りると、涼しい風が吹いてきました。生き返ります。橋口さんは、「このダイエットは、タダだ。」といって笑ってました。



(7)釜入れ

午前10時、釜出しが終わるとすぐに釜入れが始まります。青々としたい草が次々と運ばれていきます。ここでも大変な仕事は奥様が担当します。


ご夫婦の息のあった仕事ぶりは、見ていて気持ちいいです。この作業が終わるとひと段落します。奥様の笑顔がさわやかです。ほんとに働き者です。



座談会

本当は寝る時間の午後1時、忙しい中たくさんの生産者が集まってくれました。畳屋とい草生産者が本音の話をしました。とても考えさせられる課題が多くあります。互いに交流を深めながら、「たたみ文化」を継承していきます。貴重な時間をありがとうございました。



懇親会

本当は寝る時間の午後8時、私達のために懇親会をもうけていただきました。
良い人間関係をつくっていきます。



今回の刈り取り体験を影で支えていただきました谷川さん、ありがとうございました。そして受け入れてくれた橋口さん、本当にお世話になりました。とても貴重な体験で、一生の宝物になります。また、一緒に参加してくれた、冨松さん、石河さん、大変お疲れ様でした。 私たち畳屋の仕事の一つは、生産者の想いをお客様に伝えることです。それには、実際に体験してみないとわからないことだらけです。このような体験をした畳屋がもっと増えていけば、本当の畳文化を残していけると確信しています。今度は12月にい草の植え付けにお邪魔しますので、よろしくお願いします。 「畳=農業」この関係性を知っている私達は、自信をもって“本当に良い畳”をお届けします。

2009年11月4日 鏡 芳昭


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